これは、ある外資系保険会社の女性のトップセールス から聞いた、実話 です。
「どのようにトップの成績を維持しているのか?」と尋ねたところ、彼女の答えは意外なものでした。
「昼休みに電話番をすること」
なぜ、営業のプロがわざわざ電話番をするのか?
そのわけは、誰もが見落としている、あることに気づいたからでした。
たった1本の電話が100コールのテレアポの価値に換わる
彼女が昼休みに電話番をする理由は明快です。
「退職した営業担当の顧客からの電話をキャッチするため」
外資系の保険会社では、セールスマンの離職率が高いため、契約者が担当者に連絡しようとしても、すでに退職していることが珍しくありません。
そして、顧客は担当者が辞めたことを知らずセールスオフィスに電話をかけてくることがあります。わざわざ電話をかけてくる顧客には明確な理由があり、緊急性も高いケースが多いということです。
ここに、彼女は大きな 「ビジネスチャンス」 を見出していました。
契約者からの問い合わせは、アップセルやクロスセルのチャンス。
退職した営業担当の顧客が、そのまま自分の顧客になる可能性がある。
営業マンが不在の時間帯だから、セールスチャンスを独占できる。
「昼休みの電話番は、効率の悪いテレアポを100本コール架ける以上の価値がある」と彼女は言います。
考えてみれば、営業マンの営業電話よりも、契約の見直しや、追加を相談したい顧客からの1本の問い合わせ電話の方が、圧倒的に有利なセールスチャンスになるはずです。
「電話のタッチポイント」を活かす発想の本質

近年、多くの企業では、業務効率化の方針のもとに「電話番を外注」したり、音声の不在応答や「メール対応に一本化」 する流れが急速に進んでいます。
彼女のように、問い合わせ電話の価値を理解し、戦略的に活用する発想は、組織的にはレアケースになっている思われます。
電話のタッチポイントを活かす発想のポイントは3点。
・ 電話業務の「効率化」だけに目を向けるのではなく、見逃してはならない
顧客や見込み客タッチポイントでは即時的な対応の価値を再評価する。
・有望なお客様の特性とタッチポイントを発見する。
・ 取次ぎレベルで処理できるルーティンワークと、ビジネスチャンスに繋がる問合せを切り分けて、対応ルールや業務フローを見直す。
もちろん、全てのビジネスで問合せ電話がセールスに繋がるわけではありませんが、このエピソードの「電話を活かす戦略的な発想」には、あなたのビジネスにも活かせるヒントが隠されているはずです。
セールスのプロの対話スキルが武器になる

彼女は、セールスのプロですから、担当が辞めた顧客への対応は完璧なものだったと想像できます。
もしこれがコールセンターのアルバイトや、外注先のオペレーターなら、単なる電話の取次ぎで終わってしまう可能性があります。
彼女は、電話を架けてきた顧客の担当が辞めていることを察知した瞬間に丁寧なお詫びを伝え、用件をお伺いすると共に「私が責任をもって引き継がせて頂くことになっています」と自己紹介をするのだそうです。
筆者のビジネスパートナーであった米国人のマーケティングコンサルタントは、90年代の初頭から「“People don’t do business with companies. We do business with people.”」「人は企業とビジネスをするのではなく、人は人とビジネス(取引)をしたい」これが、トレンドだと強く主張していました。
テクノロジーが進化してもそれは変わることのない人の欲求であることを忘れてはならないと・・。
どのようなビジネスでも、成功のベースは人材にあり、顧客や見込み客と関係を築くのは、企業ではなく人そのものだという考え方です。
電話のタッチポイントを活かすのも「人」でありヒューマニティ(人間らしい)つまり、人間力がビジネスチャンスをつくる原動力になるということです。大量の電話を捌くコールセンターや、アルバイトでは難しい理由は、人が対応する価値を十分に発揮することができないからです。
セールスのプロが電話番をする本当の理由

「昼休みに電話番をするトップセールス」このエピソードの本質は、ビジネスを動かすのは人であるという普遍的な教訓です。
彼女は、ただの電話番ではなく、見込客や顧客との関係を築く場として
戦略的に電話のタッチポイントを活用していました。
もしこれが、コールセンターのアルバイトや外注先のオペレーターだったら?
・電話の用件を聴き取る前に、担当者が退職したことを先に案内してしまう。
・「別の担当者に折り返させます」とコールバックにして、関係を築く絶好のチャンスを失う。
彼女がトップセールスである理由は、その企業の誰かと話したいという顧客の欲求を逃さす“ビジネスの機会”を生み出す力があるから です。
例えば、「担当が辞めている」 と察知した彼女は、こう対応します。
- まずは、丁寧にお詫びを伝える。
- 用件を伺いながら、顧客の不安を解消する。
- 「私が責任を持って引き継がせていただきます」と、自然に自己紹介をして
顧客との関係を築く。
この流れをスムーズに行えるのは、セールスのプロとしての対話スキルの強みがあるからこそ。彼女にとっては、「電話番」が「顧客との信頼関係を築く絶好チャンス」になるのです。
ところが、大量の電話を捌くコールセンターやアルバイトのスタッフが対応する環境では、こうした「人が持つ力」を最大限に発揮することは極めて難しくなります。
なぜなら、
- コール処理を優先すると、一人ひとりに向き合う時間が取れない。
- マニュアル化が進み、臨機応変な対応が難しくなる。
- 顧客と“対話”するのではなく、事務的な取次ぎ対応になってしまう。
電話のタッチポイントを活かせるのは、「人」だからこそできる対応力です。
このエピソードは、ビジネスの本質は「人との関係性」にあることを物語っています。顧客や見込み客と信頼を築くのは、企業のブランドや、仕組みではなく「人の対応力」そのものだということです。
問合せ電話を、一塊にして軽視するか、それとも「売上につながる貴重なタッチポイント」として活用するか。ビジネスにおいて、メディアとしての電話をどう位置づけるかが、成功を左右するカギとなるかもしれません。

ちなみに、外資系生命保険会社のトップセールス(エグゼクティブプランナー)の年収は2,000万円〜3,000万円台。彼女は、昼休みに電話番をしてチャンスを掴み、アポが取れたらベンツに乗って商談へ向かうのです。